近視進行を抑制する光!?

「バイオレットライト」とは

これまで世界のさまざまな研究チームにより、屋外活動が近視進行抑制に関係があることが報告されてきました。しかし、屋外活動のうち何が近視進行抑制に効いているのかは不明でした。そんな中、2017年に新たな研究結果が論文として報告されました。太陽光に含まれる紫色の波長の光「バイオレットライト」が近視進行抑制に大きく関係していることが明らかになったのです。

TOPICS

  • 日本の研究チームが発見!バイオレットライトと近視の関係
  • 太陽光に含まれるバイオレットライトとは?
  • バイオレットライトを浴びるとどうなるの?
  • バイオレットライトの効果を検証した2つの実験
  • バイオレットライトが近視進行抑制の救世主に!?

日本の研究チームが発見!
バイオレットライトと近視の関係

2016年12月、慶應義塾大学医学部の研究チームは、太陽光に含まれる「バイオレットライト」が近視の進行をおさえる可能性があることを世界で初めて発表しました。

この発表以前から、「屋外で過ごす時間が長いと近視になりにくい」ことが論文で報告されていました。さらに、海外の近視研究グループが「屋外の『光』がカギを握っている」と予測し、研究が進められてきました。

そんな中、このバイオレットライトに関する研究結果は、権威ある医学雑誌『EBioMedicine』2017年2月号に掲載され、「近視の発症や進行のメカニズム解明、ならびに新しい予防法・治療へ向けた画期的発見」として話題になりました。

太陽光に含まれる
バイオレットライトとは?

では、近視予防のカギを握るバイオレットライトとは、いったいどういうものでしょうか?

地上に届く太陽の光は、人間の目が感知できる光の「可視光」、感知できない「可視光以外(紫外線、赤外線など)」の大きく2つにわけられます。太陽の光はさまざまな波長の集合体で、プリズムのような分光器で分解すると、虹のような赤から紫までの色が表れます。このうち、紫色の部分がバイオレットライトです。

太陽光の波長

バイオレットライトとは、紫外線の手前にあたる波長360〜400nmの紫色の光です。太陽光には豊富に含まれていますが、屋内で使われる蛍光灯やLEDライトにはほとんど含まれていません。

バイオレットライトを浴びると
どうなるの?

EGR1

バイオレットライトが近視進行を抑制するメカニズムを追究するため、慶應義塾大学の研究チームは、近視に関係するといわれてきた遺伝子を調べました。そのうちの1つが、近視の進行を抑制すると考えられている遺伝子「EGR1」です。

そして研究の結果、バイオレットライトが目に入るとEGR1が活性化されることがわかりました。

「EGR1(イージーアールワン)」とは?

「Early Growth Response 1」と呼ばれる遺伝子です。近視進行を抑制する遺伝子と考えられています。

バイオレットライトの効果を
検証した2つの実験

慶應義塾大学医学部の研究チームは、バイオレットライトを浴びることで近視が実際におさえられるかどうかについて、2つの研究を行いました。

1つは実験近視モデルとして世界中で広く用いられているヒヨコを使用し、バイオレットライトを当てる群と当てない群にわけて研究したところ、バイオレットライトを当てたほうの群で有意に近視進行が抑制されました。

もう1つはヒトの臨床データを用いた後ろ向き研究(過去の事象について調査する研究)で、コンタクトレンズで視力矯正をしている13歳から18歳の子どもについてデータ解析した研究です。コンタクトレンズには、バイオレットライトを通すものと一部をカットするものがあります。バイオレットライトの一部をカットするコンタクトレンズを装用している子どもの眼軸長の伸びは1年で0.19mmだったのに対し、バイオレットライトを通すレンズを装用している子どもの眼軸長の伸びは、1年で0.14mmでした(P<0.05で有意差あり)。

【異なる透過率のコンタクトレンズ装用による眼軸長変化量の比較】
出典:Torii H, Kurihara T, Seko Y, Negishi K, …Tsubota K. EBioMedicine, 2017.

つまり、バイオレットライトが目により多く入るコンタクトレンズを装用していた子どものほうが眼軸長の伸びが少なく、近視の進行抑制に重要である可能性が示唆されました。

バイオレットライトが
近視抑制の救世主に!?

屋外で活動する時間が長いと、なぜ近視になりにくいのか? 地道な研究から、光の照度とともに光の波長としてのバイオレットライトがその有力な答えとして浮かび上がってきました。

近視を予防する方法の1つとして注目されているバイオレットライト。現在もさまざまな研究が進んでおり、さらなる近視進行抑制のメカニズム解明が期待されています。

(参考文献)
Torii H, Kurihara T, Seko Y, Negishi K, …Tsubota K. EBioMedicine, 2017.