「子どもの視力低下」が

世界でも社会問題化。

アジアでは60年で近視人口が4倍に!

近視人口は世界中で増え続け、2050年には世界人口の約半数が近視になるという予測があります。この状況に危機感を抱く国々はすでに対策をスタート。学校のカリキュラムに、近視対策を取り入れている国もあるのです。

TOPICS

  • すでに世界人口の約1/3が近視
  • 世界の半数が近視になる日がくる!?
  • 各国における近視への取り組み

すでに世界人口の約1/3が近視

いま、世界中で近視の人が増えています。2012年の調査では世界人口の約22%にあたる14億4000万人が近視と報告されています。

とくに、中国、香港、台湾、韓国、日本、シンガポールといった東アジアの国々で近視が急激に増加し、10代の近視の割合は80%以上。香港、台湾、シンガポール、韓国では1950年代からの約60年間で20代以下の近視が約4倍にも増えているのです。

【東アジアで近視が増加】
出典:Elie Dolgin(2015)『The Myopia Boom』(Nature)

アメリカやヨーロッパでは近視の割合は30〜50%ですが、やはり増加傾向にあり、数年後には東アジア並みになるという予測も。こうしたことから、WHO(世界保健機関)をはじめとする保健衛生機関や各国の政府も危機感を抱き、近視についての研究が盛んに行なわれるようになりました。

世界の半数が近視になる日がくる!?

2050年、世界の約50%が近視になるかも?
出典:Holden BA, et al. Ophthalmology.(2016)

約30年後の2050年、全世界の近視人口は47億5800万人にも上るという試算があります。これは、世界人口の2人に1人にあたる数字です。また、強度近視(※)は世界人口の約1割にあたる9億3800万人になると推計されています。

※この研究での強度近視は-5D以上

各国における近視への取り組み

強度近視になると、失明や網膜剥離などの合併症を起こすリスクが高まります。

20歳の時点で近視の割合が8割に達する中国ではすでに、都市部に住む人の失明の原因の第1位が近視です。こうした深刻な状況を解決するために約20億円の予算をつぎ込み、近視研究拠点を5つも創設し、研究に取り組んでいます。

シンガポールでは、「住んでいる場所の環境が、視力低下に関係する」とするユニークな報告が出てきました。オーストラリアとシンガポールはどちらも中国系の人が多く住む国ですが、同じ中国系でも、シンガポール在住のほうが近視が多いのです。シンガポールには高層のタワーマンションが多いことから、「タワーマンションのような環境が、視力低下に影響するのではないか」と考える専門家もいます。

別の調査では、7才の中国系シンガポール人の近視の割合は28%であるのに対し、オーストラリア・シドニーでは、同年齢の中国系の人では近視の割合が3.3%であることがわかりました。屋外で過ごす時間を比べると、シドニーでは週に約14時間、シンガポールでは週に3時間と、大きく異なります。

この2つの報告から見えてくるのは、同じ人種でも、環境によって視力に差が出てくるということ。さらに、「屋外で過ごす時間の長さが近視に影響する」という可能性が浮上してきました。これらの研究結果をふまえて、シンガポールをはじめとするアジアの一部の国では、学校教育のカリキュラムに「屋外活動の時間」を組み込む動きが出てきています。

視力低下を防ぐことはいまや、世界中の人々の健康に関わる大きな問題となっているのです。

(参考文献)
Elie Dolgin『The Myopia Boom』(Nature、2015)
Holden BA, et al. Ophthalmology.(2016)
Singapore National Eye Center 「Go outdoors for better eyesight」(2015)